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お知らせ
2024.07.22
ライトノベル 21
社労士の磯山は、顧問先のスーパーマーケットの社長の清原から、いわゆるカスタマーハラスメントについて相談をうけた。
清原曰く「採用した従業員が数年で辞めてしまい、中々従業員が定着しません。人手不足の現在、折角採用した従業員がすぐに辞めるのは大変困ります。退職する従業員に話を聞くと、退職の原因は、いわゆるカスタマーハラスメントが非常に多いです。何とか対応策を考えたいと思いますが、どうしていったらいいでしょうか?」
「そうですか。具体的にどのようなカスタマーハラスメントがあるのですか?」とまず磯山は聞いた。
「例えば、購入した果物を切ってみたら、腐れていた等の問題が起こるとします。私どもの対応としては、当然商品をお取替えか代金をお返しする事になります。しかし、お客様に、それ以上の事、慰謝料までもしつこく要求される。
また、店長を呼べと騒がれて、店長がでてきたら、「なんだ。あんたみたいな若造が店長か。」と暴言を吐かれたりする事があるのです。
後、最近では、特売の商品をお一人様1つまでというように、購入を制限したら、それに対して、こちらが理由を説明しても、しつこく文句をいうお客様もいます。まったく、そういう人達は文句をいえば思い通りになると思っているのでしょうかねえ。」と清原はいう。
「そうですか。それはちょっと・・・行き過ぎたクレームですね。」と磯山は相槌をうつ。
「お話したような、執拗なカスタマーハラスメントがあると、対応している従業員だけではなく、それを見聞きしている従業員までも精神的に疲弊していくのが現状です。対応策を検討する必要があると思いますが、どこから始めたらいいいでしょうか?」と清原は続けた。
「そうですね。まずはお店の方針として、カスタマーハラスメントには毅然と対応する姿勢を明確に示し、いざとなったら従業員を守る姿勢も示すところから始めましょう。例えば、お店にポスター等を掲げて、過剰な要求には対応しない・暴力や長時間の居座り・猥褻行為等あれば、警察に通報する等毅然と対応する姿勢を明確に示しましょう。 また、何かあったら従業員を1人で対応させない事も大事ですね。」と磯山は考えながら答えた。
「なるほど。早速、社内で話し合ってみます。さらにできる事はないでしょうか?」「そうですね。従業員同士で情報共有する機会を定期的にもうけうる、クレーム対応をマニュアル化するのも有効だと思います。」と磯山は答えた。
「わかりました。できる事から初めてみます。」と清原はいった。
2ケ月後、清原から連絡があった。
「あれから、早速、カスタマーハラスメントに毅然と対応する旨のポスターをお店の入り口に掲げてみました。それ以降、執拗なクレームや従業員への暴言が半減したと従業員が申していました。これは、一定の効果があったようです。唯、先生がいわれた1人で対応させないは、中々徹底できていないです。皆、自分の事で忙しい等いろいろ事情があるみたいです・・・・。」
「そうですか。すぐに体制を整えるのは難しいでしょうが、定期的に話し合いを重ねる事で、従業員の皆さんの意識も変わってくると思いますよ。」と磯山は答えた。
「そうですね。従業員にも繰り返し話してみます。研修をする事も考えてみます。」
後日、磯山を呼んでカスタマーハラスメントの研修会をした。一通り、カスタマーハラスメントの対応策について磯山が説明した後、みんなで話し合う時間になった。
「長時間の執拗なクレームは対応を打ち切ってもよいとの事でしたが、どの程度であれば対応を打ち切ってもよいのでしょうか?」と従業員から質問があった。
「一言で長時間のクレームといっても、基準があいまいですよね。ですから、例えば30分以上は対応しない等、会社として対応する時間を明確に決めた方がいいでしょう。」と磯山は答えた。
「そうですね。同じ内容のクレームは30分をめどに打ち切る事にしましょう。」と清原がいった。
「悪質なクレームを繰り返すお客さんは出入り禁止にはできないのでしょうか。そういえば、以前、万引きをした方を出入り禁止にした事はありましたよね。」と専務の山下がいう。「出禁にしたいのはKさんの事?」と清原はいう。専務は頷く。
「数年程前から、月に1回程ご来店されるお客様で、品揃えが悪い、接客がなっていない等々細かい事にクレームをいう方がいるのですよ。ご要望にはお答えできません。と何度かお伝えしていますが、相変わらず繰り返しクレームをいってきます。本人はより良いお店になってほしいからだと主張されますが、何が目的なんなのか・・・」「まあ、警察沙汰にするような話ではないのですが、それだからこそどう対応していいか悩みます。このようなクレーマーの場合、最終手段として、お店のご来店そのものを、お断りする事はできないのでしょうか。」と山下は続けた。
「そうですね。一般論として、店舗は私有地であるので、立ち入りを拒む権利はお店にあります。但し、いきなり入店お断りとするのではなく、まずは、今後このような事があつたら、ご来店をお断りします。というように警告を相手方にした方がいいと思います。本格的に検討される場合は、弁護士さんにもご相談した方がいいでしょう。」と磯山は説明した。
「なるほど。お話した事で、なんとなく整理されてきました。1つ1つ進めていく必要がありますね。」と山下はいった。「今後もいろいろあると思いますが、まずは、情報共有と1人で対応しないを我が社の方針として、徹底させていきたいと思います。従業員の皆さん。今後もご協力をお願いします。」と清原がまとめた。