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2024.03.11

ライトノベル 18

 社労士の北山に、「障害年金を自力で提出したが不支給になりました。傷病名は鬱病です。納得いかないので、審査請求をしたい。」という電話での相談があった。北山は、審査請求の期限を見据えつつ、まずは厚生労働省に情報の開示請求をする事にした。1ヶ月程度で書類は届く事になっている。北山は、その準備をして初回の面談に望んだ。

 当日、「こんにちは。石山と申します。今日はよろしくお願いします。提出した資料のコピーも持ってきました。」と40代の女性が北山の事務所にやってきた。「こんにちは、社労士の北山です。よろしくお願いします。早速ですが、資料を拝見させていただきます。」

 北山は不支給決定の通知から確認していく。基礎年金での請求で、1.2級非該当とある。症状が軽いとみなされたのだろう。
 次に提出した診断書のコピーをみる。「精神の診断書で重要な一般状態区分や日常生活能力の程度は、十分2級該当の判定である。他に原因があるとしたら・・・パートで週20時間程度働いているのが、症状が軽いとみなされた原因ではないか?」と北山は考えた。

 北山は「石山さん。拝見させていただいた所、診断書の内容に問題はありません。症状が軽いとみなされた原因は、おそらくパートで働かれている点だと思います。一日4時間 週3日程度就労している旨記載がありますが、精神疾患の場合は、就労している事実で非該当になる場合があります。」「そんな・・・ 私は働いているといっても、書いてある時間の通り、普通の人の半分くらいしか働けていませんし、それすら体調が悪い時は仕事にいけないのが現状なのに。」と石山は不服そうな表情になった。

 「はっきりとした方針は、石山様の審査の過程の開示請求をしてみてから決めたいと思いますが、まず、審査請求をするなら審査請求の請求書を、厚生局に送りましょう。先に審査請求をする旨の意思表示をしておきましょう。また、石山様がよろしければ、職場での状況を上司や同僚の方に文章で説明して、改めてご自身の症状を伝えてみましょう。」と北山はいった。
 「わかりました。情報の開示請求と審査請求をお願いします。」と石山はいった。
 「では、この書類を記載してください。」と北山は早速必要書類の準備をはじめた。

 厚生局に審査請求をして、また、厚生労働省からの開示請求の書類が届くまでの間に、北川は石山と打ち合わせをして、職場の上司に書類を書いてもらう事にした。職場での労働時間や仕事の内容などの勤務状況や配慮している点を記載してもらう事にした。

 後日、石山の職場の上司が、北川の作成した質問状に、返答してくれた。会社としては、本人から病気の事も聞いており、なるべく無理させないように配慮しているとの記載があった。急に休むという事にも理解をしているとの記載もあった。石山は北山に、「職場での状況はおおむねこのような感じです。」と伝えた。
 その後、開示請求した資料が送られてきた。何回が見たが、認定基準では2級相当なのに、非該当なのは、結局「就労しているから」という事しか記載がなかった。「やっぱり。職場の資料の他にも何かアピールできるものはないだろうか?」と北山は考えた。

 資料が揃ったので、石山と再度、面談をした。「仕事の後は、例えば疲労感が強くて、なにもできなくなるというように、日常生活に支障がありますか?」と北山は聞いた。
 「一日4時間 週3日程度の勤務なのに、仕事を終えて帰宅すると、なにもできず数時間は、ぼーとソファーで過ごしてしまいます。夕方になるので、洗濯物を片付けたり、夕食の準備をしないといけない事は分かっていますが、体が動かず、夫が帰宅してから、夫にしてもらっています。これでも障害年金を受けられるほどではないのでしょうか?」と石山はいう。
 「そうですか。就労の影響で日常生活に支障が大きいという点も、アピールできる点になるかもしれません。そういう点も審査請求の趣旨および理由書に記載してみましょう。」と北山はメモを取りながらいった。改めて石山に仕事の後の状況を文章にまとめてもらい、職場の上司の証言とともに、「趣旨及び理由書」に記載していった。

 その後、「趣旨及び理由書」を厚生局に送り、しばらくは通知を待つことになった。3カ月程して書留で厚生局から採決が北山のところに送られてきた。 早速読んでみると、長々と認定基準等が記載されていたが、就労できているので総合的に判断して、2級非該当であるという結論であった。

 「残念ながら、決定は覆りませんでした。あらためて再審査請求をしましょう。再審査の方が覆る可能性が高いです。」と北山は石山に伝えた。 「そうですか。ここまできたら最後までやりましょう。」と石山は再審査請求に同意した。

 「さて、追加で何を主張しようか?」北山は改めて考えてみた。就労に関しては具体的な証言がえられているので追加で記入してもらう事はない。ご主人にご家庭での状況を証言してもらうと、より就労の影響が伝われるかもしれない。と思い、記載してもらう内容をまとめ、石山に相談してみた。 
 「分かりました。主人に頼んでいます。」と石山はいい、1週間後、文章が出来上がってきた。

 「夕方帰宅しても、カーテンも閉めず、ソファーでぐったりしている事もある。仕事の日は、家事は殆どできていない。」等々記載があった。
 前回の審査請求に追加する事として、再審査請求でアピールする事にした。石山に出来上がった文章を、最終確認してもらい厚生労働省に書類を送った。
 「審理まで7-8カ月かかります。あと、再審査請求をしたら、機構側が採決をえずに自主的に処分を変更すると申し出る場合もあります。」北山は伝えた。「そんな事もあるのですか。」「そうですね。公開審理の数日前に連絡がある場合があります。急に連絡があるので、一応、心の準備をしておきましょう。」と北山はいった。

 忘れた頃に、厚生労働省から審理の日付が決定して、出席を確認する旨の案内がきた。「公開審理の日がきまりました、8月7日の午後です。私が参加します。」と北山は石山に連絡した。

 公開審理当日 北山は霞が関に向かった。機構側は就労できているからという主張を繰り返してきた。
 北山は代理人として、改めて就労が日常生活に深刻な影響を及ぼしていると説明した。無事、公開審理は終了した。

 しばらくして、北山のもとに、決定の謄本が送られてきた。「現処分を取り消す」及び「2級相当である。」と記載があった。北山は、早速石山に連絡した。
 「再審査請求で覆りました。2級相当だそうです。」と伝えると「ありがとうございます。もう、諦めていました。」と石山は感謝の言葉を述べた。 審査請求から含めると、1年以上かかったが、諦めなくてよかったと北山もほっとした。

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