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2024.06.17

ライトノベル 20

 障害年金の代理請求に携わっている社労士の北山は、時々ある難病の患者会の会合に出席する事にしている。
 一般的に、患者会とは同じ病気や障害を持つ人たちが定期的に集まって、お互いの悩みや不安を話しあう、また、診察やリハビリがうけられる医療機関について、及び、患者が利用できる福祉制度等の情報提供を主な目的として活動している団体の事をいう。
 患者数が少ない、希少性疾患で病気が社会的に認知されていない疾患の場合は、より多くの人に病気を知ってもらうための取り組みもしている患者会もある。
 患者会の活動の内容は、定例会・懇親会等を定期的に開催し、患者同士の悩みや不安、情報の共有、また、医師や看護師等の専門家による相談を受ける場を設ける。さらに会報の発行など様々な取り組みがある。
 最近はピアサポートや患者サロンのように、患者会と同じような活動をしている団体もある。
 中には行政に対する働きかけを行う活動もしている患者会もあり、例えば、指定難病の助成が得られるようになった、病気を診断できる医療機関の一覧ができた等、目に見える活動の成果もある。

 北山が患者会に参加するのは、社労士として、障害年金や傷病手当等についてより多くの人に知ってほしいという思いもあるが、患者会に参加する事で、当事者の方の生の声を聴けることや、病気について医療の面を含め幅広く知ることができるのは、障害年金を通して様々な病気や障害をもつ方と向き合う北山にとって貴重な機会でもあるからである。
 北山が患者会に参加して気づいた事の1つは、難病や根治が期待できない病気の場合は、患者本人だけでなくご家族の苦悩も大きいという事である。
 「治療費がかかる。」「何とか再就職したいが、めどが全くたたない。」「家に引きこもっているので今後が心配です。」「今後の生活をどうしたらいいのか?」等の切実な声も多い。
 そのような話を聞くと患者のサポートには医療の面だけだは到底対応できないと北山は思う。
 本来は得られるはずの支援が、制度を知らない事で利用できなかったり、病気がわかり、あせってすぐに退職してしまう方も多い。
 患者会のような形で、困っている人が相談できる場所を増やす事で、そのような問題を解決していけたらと北山は思う。
 また、「複数の病院を転々として何年もたってやっと診断がついた。」「地元では病名も分からず、都会の病院にいって初めて診断がついた。」「どこの病院でも異常はないといわれた。明らかに症状があるのに。」とそんな話も患者会ではよく聞いた。
 特に地方では、患者数が少ない病気の場合は、適切な診察リハビリ等の対応が可能な医療機関もみつからない。また情報も限られてしまう。
 そのような厳しい実情がある事も知る事ができた。まだまだ、診断がつかず苦しんでいる患者も多いと思われる。
 そんな中、病気についてより多くの人が知るために、患者会の果たす役割は大きいと北山は思う。

 障害年金の請求で依頼を受けた方から「他の患者さん達はどうしているのでしょうか?薬について自分でも調べてはいますが、直接、治療している方の話を聞いてみたいですね。」と治療に関する話をしている最中にふと言われて、北山はある患者会を紹介した事があった。
 実際に参加したことのある団体なので安心して紹介できた。
 障害年金の請求を検討する方の悩みは、収入の問題だけではなく、治療・日常生活について等多岐にわたる。
 後日「同じ病気の人と知り合えるきっかけになってよかった。」と報告をうけて、やはり患者同士が情報交換をする場があるのは意義があると北山は思った。

 患者会の活動は、主に患者やご家族のボランティアに支えられている。
 中心になって会を盛り上げてくれる方にはみな感謝しているが、一方で高齢化や担い手不足の問題もある。

 さて北山は久しぶりにある患者会の定例会に参加する事した。毎回新たな出会いがあるが、今回はどんな出会いがあるのだろうかと想像しながら北山は会場に向かった。


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