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2024.11.11

ライトノベル 23

 社労士の北山に「強直性脊椎炎」という希少性疾患の指定難病の患者から障害年金の相談があった。
 依頼人の西山が話してくれたところによると、強直性脊椎炎とは、簡単にまとめると「脊椎や骨盤の仙腸関節に炎症が起こる病気で、自己免疫疾患”のひとつであり、原因はよく分かっていない。
 症状は、炎症が生じた部位に痛みが生じる事から始まり、病気が進行していくと、背中を動かす事ができない、まっすぐ前を見る事ができなくなる、股関節の悪化等、日常生活に大きな支障をきたすことも多い病気である。また、他の自己免疫疾患やぶどう膜炎という目の病気を併発することもある。」という事であった。

 北山は西山との初回の面談前に、強直性脊椎炎という病気について調べてみた。
 患者数が少なく、希少性の疾患で指定難病に該当するという事、また確定診断までに時間がかかり複数の医療機関を転々としてようやく診断されるというケースが多い事も分かった。

 初回面談当日、「こんにちは。西山と申します。本日はよろしくお願いします。」とご本人と奥様が北山の事務所にきた。

 「社労士の北山です。本日はよろしくお願いします。」と北山は名刺を差し出した。
 「まず、西山様は強直性脊椎と伺いましたが、現在、どのような症状がありますか。」「そうですね。座っていても腰が痛くて1時間程度しか落ち着いて座っている事ができません。後医師にレントゲンを見てもらったところ、股関節も狭くなっているとの事でした。
 歩くのや、屈む姿勢をするのに制限がありますね。」「そうですか。他に症状はありますか?」「今のところ、他の症状はありません。」と西山が答えた。

 「そうですか。では、診断書は肢体の障害で記載してもらいましょう。次に病歴についてですが、電話でお話を伺いましたが、改めて、初めて調子が悪くなって病院にいかれたのはA整形という事ですね。
 その後、症状が悪化したので、B病院にいかれて、そこでC総合病院を紹介されて、強直性脊椎と確定診断されたという事ですね。」と北山が病歴についての聞き取りをはじめる。

 「そうですね。2年程前から急に、夜寝て朝起きると腰が痛いという症状が続いて、だんだん悪化して、落ち着いて座るのも厳しくなってきました。
 そこでA整形にいきましたが、痛み止めの薬を処方されただけでした。その病院の医師から、レントゲンでは異常は、見当たらないと言われました。異常がないのであれば、そのうち治るかなあと思っていました。
 しかし、数か月たつ間に、さらに症状が悪化して、横になっていると、いろんな所が痛くなり、眠れなくなりました。そこで別のB病院に行きました。
 その時は、手足の指の腫れもありました。B病院では、血液検査をして、炎症反応を示す数値が高いので、何等かの膠原病の可能性があるといわれて、C総合病院を紹介されました。
 C病院で、さらに、いろいろ検査した結果、強直性脊椎と診断されました。
 現在はC総合病院の整形と膠原病内科に通院しています。一年程、薬による治療を継続していますが、そうですね・・自分の実感では病気の前の半分程度しか、回復していないと思います。
 今では、外出するのに杖が手放せなくなりました。仕事は、元々営業職でしたが、半年ほど、休職せざるを得なくなり、先月から内勤として復職しましたが、以前みたいに仕事ができません。収入も含めて先の見通しが立たずいろいろと厳しいです・・・。
 障害年金が受給できれば、少しは生活の心配をしなくてよくなると思い、障害年金を請求する事にしました。」と西山は今までの出来事を話した。

 「わかりました。少しずつでも状況が良くなるといいですね。西山様のような肢体の障害の場合、障害年金の等級は、主に関節や脊柱の可動域と日常生活の動作の制限で決まります。
 診断書を医師に記載してもらうにあたり、病院で、関節の可動域や筋力の測定してもらう必要があります。また、日常生活の動作の評価については、医師に、ご自身が苦労している点を文章等でまとめて伝えましょう。歩行に杖が必要という事であれば、杖無しの状況で評価をしてもらってください。」と北山は伝えた。

 「わかりました。C総合病院の整形の先生に、診断書を書いてもらいます。そういえば、靴下やズボンを履くのも一苦労しています。足の爪も、自分では切れない部分があります。」と西山はメモをした。

 「そうですか。そのような点も医師に伝えてみましょう。また、A整形とB病院で受診状況等証明書を記載してもらう必要があります。原則として受診状況等証明書は初診日の病院のみでいいのですが、B病院の状況を説明するためにB病院の受診状況等証明書も取得した方がいいと思います。まずは、その2点の準備をはじめましょう。」と北山はいった。
 「初診日はA病院ではないのですか?」と西山は、少し怪訝そうな表情をした。

 「状況を伺う限りA病院が初診日になると思われます。
 但し、最終的な判断は審査をする医師が決めます。また、審査の過程で問い合わせがある事もあります。一応、準備しておくとお考えください。」と北山は説明した。
 「わかりました。それも準備します。」と西山はいった。

 1ヶ月後、西山から北山に診断書と受診状況等証明書が送られてきた。
北山が診断書の内容を確認すると、脊柱の可動域と股関節の可動域、筋力が正常の半分しかないという結果であった。また、日常生活にも不自由な点がある事がきちんと反映されていた。ひょっとしたら、併合で2級になるかもと北山は思った。
 その後、病歴就労状況等申立書も西山とのメールをやりとりして完成させた。書類が全て整い、北山が、年金事務所に西山の障害年金の提出にいった。

 障害年金の請求から、数か月後、西山から無事に2級に認定されたと連絡があった。
 「自分では、3級かなと思っていたのでよかったです。」と西山は大変喜んでいた。「よかったですね。西山様の場合、足と脊柱の両方の障害が併合されて2級と認定されたのだと思います。」と北山は付け加えた。
 「そうなんですね。ありがとうございました。」と西山は北山に礼をいった。
 「いえ。本当によかったですね。後は症状が改善していくといいですね。」と北山は西山に伝えた。



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