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2026.01.05
社労士のひとり言 30
社労士の中山は、年明け早々、新年のあいさつを兼ねて、顧問先の会社を訪問した。今回訪問したのは、5年程前から付き合いのある、従業員が50名ほどの老舗の紡績関係の町工場である。
応接室に中山が入るなり、待っていた社長の江戸川が、「今年もよろしくお願いします。先生。ところで、昨年末の忘年会は、複数の若手の社員が参加したくない。企画をしたくないといい、中止にしました。忘年会が中止になったのは、コロナの時を除き、創業以来、初めての事です。新年会は当然なしです。年に数回の職場での飲み会も参加したくないとは……時代なんでしょうかねえ?いろいろ考えて困惑しています。」と切り出した。
「そうですか。うーん。流石に毎月のように飲み会となると、行きたくないという気持ちもわかりますが、忘年会ぐらいは、そんなに嫌がらなくてもと思いますよね。一応伺いますが、飲み会の席での上司の説教やセクハラがまん延していた訳ではないですよね。」
「いや。自分が見たところ、そういう事は、なかったと思います。」と江戸川は首をかしげながら答える。
「そうですか。そういう問題がなかったとしたら、言いにくいですが、実は職場の人間関係に問題があるのかもしれませんね。」と中山は答えた。
「なるほど。つまり、今風でいう、単にコスパが悪いからというより、職場の人達が嫌で、一緒に食事をするのも嫌でしょうがないという事なんでしょうか?」と江戸川は顔を曇らせた。
「まあ、もちろん、忘年会を拒んだ従業員さん達の本当の思いは、分かりませんが、仮に職場の人間関係に問題があるとしたら、なるべく早めに把握して、改善策を検討した方がいいと思います。」と中山は続けた。
「それはそうですね。毎日不愉快な思いで仕事しているとしたら、それが、いつ離職に繋がるかわかりませんからね。思えば、ここ数年若手の離職も増えていました。それでは、具体的にどうしたらいいでしょうか?」と江戸川は中山に聞いた。
「ハラスメントに関するアンケートとして、内容や程度を問わず、匿名で気になる点・不愉快に感じた点を、皆さんに記載してもらう事にしましょう。何かあるのかもしれません。」と中山はいった。
後日、江戸川は、中山の協力を得て、アンケートを実施した。回収したアンケートを、江戸川が見ていくと、やはり気になる回答が記載されていた。
後日、江戸川は中山に気になった回答をみせて意見を聞いた。
「入社1年目の者です。7月頃、自分の確認ミスで取引先に迷惑をかけてしまいました。自分が悪いのですが、取引先に1人で謝罪に行きました。課長に報告したところ、自分の責任だから1人で謝罪にいくようにと言われたからです。1人で取引先に謝罪にいくのは、非常に心細かったです。今回の件を会社として軽くみていると取引先に思われるのでないかも不安でした。取引先の方にも「1人で謝罪にきたの?上の方は一緒にこないの?」と驚かれました。以来、何かあっても誰にも相談できない職場だと思うようになりました。」
「上司や先輩に、スキルの身につけ方や自身の将来について相談できる人がいません。実際に業務に関連のある資格取得の件について上司に相談したら、「そういうのは、自分で考えて。うちの会社では必要ないから。」と言われました。仕事をする上でのスキルアップや、長期的な自身のキャリアも考えていきたいですが、このまま、この会社にいても先がみえないと感じます。」
「まず、謝罪に担当者が1人でいった。というのは、場合によっては、会社として、問題を軽くみている。きちんと再発防止策を検討していない。と相手方に思われるリスクもありますね。また、謝罪に1人で行かされたというのが、ただちにパワハラとはいえないかもしれませんが、入社一年目の新人が、きちんと、指導やフォローを受けられていないと感じた事も問題ですね。」と中山はいう。
「本当にそうですね。詳細はわかりませんが、できれば、この件は詳しく把握したいと思います。原則、取引先にお詫びにいく場合は、きちんと責任者も同行すべきですね。ミスがあった時は、単に個人の責任にせず、きちんと再発防止策を検討する職場も目指していきたいと思います。その点は周知徹底していきたいと思います。」と江戸川は答えた。
「もう一点、気になったのは、スキルアップや長期的なキャリアというのを、最近の若い子は考えているんですかね?我々昭和世代は、会社に評価されればいいと思っていましたが。」と江戸川は意外だという口調でいった。
「そうですね。そもそも、今は1つの会社に定年まで働く・働けると思って入社する人は少ないですね。ですので、他の職場にいっても、通用するものを身に付けたいと、思うのでしょうね。」と中山はいう。
「じゃあ、そういう社員は、どうしたら満足してくれるのでしょうか?」
「例えば、会社として、資格を取得したら資格手当を支給し、資格取得を奨励する。また、勉強会や研修などに参加する場合は、経費を負担する。というような制度を作り、会社としてスキルアップを後押しする姿勢を示す事が考えられます。」と、中山はよくある取り組みを紹介する。
「アンケートをとって、問題がある事がわかりました。今後の対策を検討していきます。引き続きよろしくお願いいたします。」と江戸川はいった。
後日、江戸川の会社は、新たな規定を作り、積極的に資格取得や研修等に参加できる制度を作った。また、トラブルがあった時は、必ず上司も対応し、再発防止策を考えて、社内に共有するようにした。
半年程経過して、江戸川が再度、社内アンケートを実施した所、スキルアップには、関心をもつ若手は多く、より意欲的に日々の仕事に取り組くようになってきたとの記載があった。また、ミスやトラブルがあった時、安心して報告できるようになり、再発防止策が社内に共有されるようになった事で、会社全体としてのミスやトラブルを減らす事ができるようになったとの記載もあった。「そういえば、今年は、まだ、退職者はいないな。」と、江戸川は少し安心して呟いた。
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