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2026.03.23
社労士のひとり言 31
アプリ作成を請け負っている株式会社ステーションの社長の今井は、半年ほど前から会社で実施しているNO残業デーの水曜日の夜、取引先と飲みに行った。宴会の途中でスマホを会社に忘れた事に気づき、夜の9時ごろ、会社にスマホを取りに戻った。今日はNO残業デーなので、6時には会社の電気が消灯され、鍵も閉まっていて、会社には誰もいないはずである。今井も6時前には会社を出て飲みに行った。
会社に戻ったら、暗がりの中で、薄ら灯りがついていたので、今井は驚いた。灯りをつけると従業員の北村が座っていた。
「ビックリした。忘れ物?」と声をかけたが、北村は明らかにパソコンを立ち上げており、動揺して挙動不審になっていた。これはこっそり残業していたに違いないと今井は気づき 「こんな時間まで何をしている……?」と問いただした。
「ええっと。あの……すいません。今週末が納期で、終わりそうにないので……つい……」と北村はうつむいたまま答える。
急に想定外の事態となり、何と言っていいかわからず、互いに1分程沈黙していたが、今井が「謝る必要はありません。NO残業デーなので、今日はもう仕事をやめて帰りなさい。詳しい事情は明日聞きます」と言い、北村が帰ったのを確認して今井も帰宅した。
「やれやれ……彼は、今日、たまたま残業していただけなのだろうか。実はみなNO残業デーにこっそり残業しているのだろうか?そういえば、水曜日に残業の申請はないが、本当に残業の実態はないのだろうか?」今井は床についても、しばらくそんな事を考えていた。
次の日の朝、今井は従業員を全員集めて「昨日の夜9時ごろ、たまたま会社に忘れ物を取りに戻ったら、まだ仕事をしている人がいました。NO残業デーで、6時には退社するのが我が社のルールです。社長として、残業した個人を責めるつもりは当然ありません。但し、実態が伴っていないのなら、何等かの対応が必要だと考えます。皆さん、実際にNO残業デーに残業した事がありますか。正直に話してください。繰り返しますが、残業した事を責めるつもりはありません」と言い、匿名でも回答可能な形で社内アンケートを実施した。
アンケートの結果、株式会社ステーションの従業員は、残業をする可能性のある正社員が20名いる。NO残業デーにこっそり残業したと申告した従業員は10名おり、残業時間も1回あたり平均2時間程度であった。さらに、その残業時間のほとんどが、NO残業デーなので、残業としての申請はしていないとの事であった。残業代未払いのリスクもある事がわかった。
従業員から、会社でNO残業デーとなっても、仕事量が減るわけではない。「納期に間に合わない」が、残業をした主な理由として挙げられていた。 今井は結果を見て「やれやれ……NO残業デーを宣言しただけではダメだったか。やはり甘かったか」と思いながら、事の顛末を顧問社労士の山下に相談する事にした。
数日後、今井は山下の事務所を訪れた。
「NO残業デーを会社として徹底するために、どう改善していったらいいのでしょうか。まあ、納期に関しては、取引先に丁寧に説明して、余裕のあるスケジュールでお願いするしかないですが」と今井は切り出した。
「そうですね。具体的に仕事を削減する取り組みが必要ですね。会議や社内決済等で簡素化できる点はないか、検討してみましょう。会議でも1時間かかっていたのを40分に短縮できれば、意外に大きいです。社内決済も作成する文章が減らせれば、効果はあります」
「あと、今更プロの社長に言うのは憚られますが、IT機器等の導入をして生産性が向上し、労働時間の削減に繋がると証明できれば、導入にあたり助成金の対象になる事があります」と山下は、一般的な話をした。
「なるほど、まずは会議と社内決済から手をつけてみます。現在、会議の前に必要書類を共有してはいますが、意見や提案も事前に共有すれば、より早く会議が終われるようになると思います。社内決済の簡素化も、できる事はあると思います。あと、実は導入したい機器はありますが、サブスクが高額なので現在社内で検討中です。でも労働時間の削減効果が期待できれば、前向きに導入を検討したいと思います」と今井は、少しほっとした表情で答えた。
数週間後、今井の会社で会議と社内決済の見直しが行われた。会議に参加する人数も厳選し、事前に意見を共有する事で、スムーズに物事が進むようになり、想像以上の労働時間の削減効果が得られた。また、より実のある会議ができるようになった。また、社内決済も簡素化して、1日20分は労働時間を削減できるようになった。
納期についても、今までは、他社に負けないように1日でも早い納期を顧客に約束しようとしていたが、思い切って、顧客に少しゆとりある納期を提案するようにした。相見積もりの場合、不利になるのではという不安があるが、試しに取り組んでみようという事になった。これにより従業員に精神的な余裕が生まれた。
新しい機器もお試し期間で試したところ、非常に従業員に好評であったので、本格的に導入する事にし、山下に依頼して助成金を活用する事にした。
これらを組み合わせていけば、もう従業員がNO残業デーにこっそり残業する必要はなくなるだろうと、今井はほっとした。
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